エレノワ・メンテスカヤはボクの家庭教師。
本当はフクロウなんだけど、ボクの前に現れる時はペンギンの格好をしている。
もともとは水上滑走競技の選手というアスリートペンギン。
フクロウなので飛べる。そのワザを活かして高いところを飛ぶサーカスペンギンをしたり、軟体ワザを繰り出したりして人の、いやペンギンの目をぱちくりさせている。
そんなエレノワが全くの偶然か、ほんの気まぐれか、ボクの飼い主マコトの家の窓から突然飛び込んできて、気がついたらボクの家庭教師になっていた。
エレノワにとって「ペンギン」は仮の姿なので時には人に化けたり、夢に現れたり、もう好き放題。
ヒドイ時なんてボク自身に化けてあちこち出歩いてボクの振りをして友達と遊んだりするから、後で本当のボクがその友達と会うと、もうバレるんじゃないかとヒヤヒヤしちゃうこともしばしば。
久しぶりに会う友達から「キミってすごいね! この間は雲と遊ぶところを見せてくれてありがとう!」なんて言われたら多分友達が会ったのはボクじゃなくてエレノワ。
えーと、そうそう。
エレノワが最初に教えてくれたのが「イメージできることは必ず実現する」ってこと。
そして「イメージ通り動くように組み立てたり努力したりして、いよいよ実現した時には自分はその先にいる」んだって。
その時には、わかったようなわからないようなボヤっとした感じだったよ。
でも、
ボクに化けたエレノワが友達の前でやって見せた「雲と遊ぶ」を今度はボクがやってみたら、ほんの少しその感じがわかった気がした。雲の群れはこれからボクが出会ういろんな場面。その中でひときわ大きくて立派なのが「実現」のシーン。そのシーンの中に自分がいるのが見えた時、そのまた先にもまだ飛んで行く空や、遊ぶ雲がたくさんあるのが見えたんだ。それでエレノワが「それから?」って言った理由がわかった気がした。
「それから?」「その先には?」ってボクの肩ごしに後ろからいつもエレノワがささやいている気がして、ボクもそう自分に質問するのが習慣になったってわけ。