にぎやかな人

投稿者: | 2016年9月5日

耳をすまそう☆

ヒトと一緒に暮らしていると、楽しいことやびっくりすることがたくさんある。
そして時々、ちょっと困ったな、ということも。
ツライというほどじゃないけれど、もっとこうしたらいいのに、と思うんだ。

ヒトはとてもにぎやか。
たくさん話す。
笑ったり、怒ったりすると、いよいよにぎやか。
たくさん集まると、もっともっとにぎやか。

ドウグというものを使うと、さらにいっそうにぎやか。
遠くでも声が大きく聞こえたり、昨日の声が今日聞こえたり。
ガチャガチャとわけのわからない音が出るヤツとか、何に使うのかわからないヤツとか、ヒトはそんなヤツを集めるのが好き。
集めて、ガチャガチャさせて、一体何をしてるんだろう?
ヒトってかなりフシギ。

僕たちペンギンのことをヒトは「うるさく鳴く」って思っているらしい。
確かに離ればなれになったツレアイや子供がちゃんと会えるのは、高く声をあげて鳴くからだね。
そんな時にはつい僕たちも声が大きくなるけれど、それはその時だけ。
いつもはけっこう寡黙なんだ。

「えっ、ほんと?」って思ったら水族館に行ってごらん。
僕たちの基本動作は「立っている」こと。
でも誤解しないでね。
ぼーっとしてるんじゃないんだよ、ちゃんと考えているんだ。
かなり真剣にね。

「考えている」というか、「感じている」んだな。
うん、そう感じている。
眼を開いて、怖いカモメが近づいてこないか、
耳を澄まして、お友達が誰か声をあげて助けを呼んでいないか、
鼻をきかせて、海から今日のご馳走の匂いがしてこないか、
昨日食べたイカは美味しかったな、
カラダにあたる今日の風は少し冷たいかな、海は波が高いかな、ってね。

ツレアイが決まる前はもひとつ大事なことがあるよね。
そう、「募集中だよー」って声をあげてる子はいないかな、って。
あっちこっち物欲しそうに探し回ると嫌われちゃうから、声をよく聞くんだ。
そして「きっと素敵な子に違いない!」って感じたら、ダッシュ。
でも、「こんにちは」の挨拶をして「ねぇねぇ」って近づいただけでフリッパーで
「ベシ」ってされちゃう。
そこでめげるか、懲りずにアタックするかは性格によるね。
僕は「めげる」派。
「今に見てろよ、もっと強くなって気に入ってもらうんだ!」と決意も新たに、フリッパーを落として前かがみでトボトボ引き返す。

こういうツライことがあると、その子と似た鳴き声を聞いただけで「あー、あの時は…」って僕たちだって「ぴぴっ」と思い出すよ。
でも、それを「さっ」と感じたら、「ふわっ」と流しちゃうんだ。
トリ頭は、こういう時に便利。
そう、「ぴっ、さっ、ふわっ」。
でまた、感じる、感じる、感じる…

どこかから大きな声や、ガチャガチャした音がたくさん聞こえてくる。
ヒトの世界では、耳を澄ましてもなかなか大切な音が聞こえてこない。
もっと大事にすればいいのに…
声の出し方とか、ガチャガチャの使い方とか。
ちょっと耳を澄ませばハッキリ聞き取れるんだから。

このページの短縮URL : http://wp.me/p7RXjc-7

Share