「マシュマロ実験」をご存知ですか?
子供の前にマシュマロを1個おき「15分間食べずに我慢できたらもう1個あげます」と言って我慢できたかが人生を左右するという研究のお話です。
4歳児の目の前にマシュマロを1個おき、「15分間食べずに我慢できたらご褒美にもう1個あげます」と言って、どうするか様子を観察します。すると、我慢できずに食べてしまう子、マシュマロが見えないように自分の長い髪の毛で顔をおおう女の子、「降参」を知らせるベルを遠くへ押しやる子、「食べなければ…」というわけで、ペロッと舐めて我慢する子…。
実はこの実験、本題はその時に食べたか我慢できたかではなく、それから何年もしてからその子たちがどのような人になったか、というところにあります。まず10年後の学力検査の成績と「我慢」の結果を比べると、我慢できた子の方ができなかった子よりも良い成績をとっていました。その後も様々な項目で「我慢したかどうか」による違いが明らかにされたのです。
つまり、この「マシュマロを我慢できたかどうか」ということが、その子の人生を大きく左右したと言えるわけです。
さて、では「我慢できた子」は良いとして、「我慢できなかった子」はいったい、その後の人生をどう乗り切れば良いのでしょうか。それとも、もはや挽回不可能な違いが子供のころにできてしまっているのでしょうか。実のところ、その答えはそれほど明確ではありません。相当の部分がある意味で「ハンデ」として差がついてしまっていたとしても、少なくとも全く挽回できない、という証拠はありません。頑張ってなんとかなるところがあれば、それは何とかすべきものでしょう。いや、なんとかなるように淡い期待をしてでも努力しないといけない、と言った方が良いかもしれません。
いま、目の前にある欲求の充足を我慢して、自分をコントロールする能力がいかに人生で重要な意味を持つかを「マシュマロ実験」は物語っています。
ところで、私自身はどちらでしょうか。たぶん「指先でツンツンしながら、かろうじて食べずに踏みとどまる」というくらいだったのではないでしょうか。ここに載せている写真をストックフォトから見つけ出して、じっと見ているうちに無性にマシュマロが食べたくなってきます。ぷよぷよの触感、ねっとりジュワっとした独特の味わいと香り… もうほとんど、我慢できずスーパーまで買いに行きそうな衝動を覚えます。さすがにそれはちょっと大変なので、冷蔵庫を開けて常備しているチョコの箱を取り出し、テーブルの上に置いてしばし眺めます。じわっと口の中にひろがるチョコの味のイメージ… 誘惑との戦いです。我ながら声をあげて笑ってしまいました。「マシュマロ実験、すごい!」。
結果、からくもチョコを冷蔵庫に戻して、今この原稿の推敲に取り掛かったところです。
■ 参考文献
・ケリー・マクゴニガル[著], 神崎 朗子[訳] 2015, スタンフォードの自分を変える教室 (だいわ文庫), 大和書房
・ダニエル・アクスト[著], 吉田 利子[訳] 2011, なぜ意志の力はあてにならないのか―自己コントロールの文化史, エヌティティ出版 p143-
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